2年ほど前から片頭痛が急に酷くなって、強い薬を処方されている。それでも悪くなるときはあって、頓服を飲む。これでもだめなときは光が目に入ってくるのがとてもつらくて夜だった場合には灯りを消して無印良品でいつだかセールのときに買ったアロマディフューザーの灯りだけで過ごす。で、せっかく機能としてついているのだからと、その日はローズゼラニウムのオイルを垂らして休んでいた。
ローズゼラニウムのあますぎない香りが部屋にかすかに漂うのを感じながらソファで寝転がってぼーっとしていた。夫はナイトプール*1に行ってしまって部屋はひとりだ。小一時間、ぼーっとしていたら頭痛も治まってきた。そんな頃合いに夫が帰ってきて、少し外出することになった。
昨年の夏に市内のアウトドア用品店で好きになって買ったサンダルをはく。5月だけどもうそんな季節。サンダルのソールはとても薄くつくられていて、自分が歩む度に発せられるペタペタという小さな反響音を聞きながらアパートの階段を降りていった。夫のクルマに乗ろうと階段を降りた先で左に歩き出す。
すると、鼻腔いっぱいに、夜のにおいが入り込んできた。
花の香りだ、と直感的に思った。あまいけど、どこかですっきりとしていて春と夏が混ざった、ちょうどいまの季節のにおいだ。さっきまで、それほど大きくない部屋でかすかにただよう香りとは、まったく次元の異なる、夜の空間まるごとに充満する香りに私はうっとりとした。アロマオイルじゃあ、これには勝てないんだなあ。「私たちのほうがずっと立体的なにおいなんですよ。もしこのにおいが嫌いじゃなかったら、また頭が痛くなったとき夜に部屋から出てきてはどうですか?」と穏やかに薦められたような。
次の日、窓をあければあのにおいがまた愛でられるのではないかと期待したけれど、あの夜のにおいは、窓を開けるのではだめで外に出てみないと嗅ぐことができないようだった。私のアパートの部屋は2階で、風が上手い方向に吹いていないなら、もしかしたら低いところでしか香らないのかもしれない。
昼間に見渡してみて、それらしき花は咲いていなかった。まさかご近所さんのおうちを覗き込むわけにもいかないので、本当にアパートの近くしか見ていないけれど。スイカズラかなあ、とは思っている。
*1:夕食後にジムのプールに泳ぎに行くことを指す我が家限定極ローカル用語